フールの鉛筆画ブログ

鉛筆画のイラストや絵を中心に描いています。黒髪が大好きです。時々短編小説も書きます。

ルイージの小説 13前編 第三章 幸福の宝石

クリクリマロンを三人で味わった後、

僕とスピネルは町の掃除の依頼を受けた。

範囲は町全体ではなく北部の一部だ。

勿論僕は変装している。

今回は見ているだけなのは申し訳ないと、スピネルも手伝ってくれた。

 

掃除をいていると彼女は時々、キノピオ達から声をかけられていた。

キノコタウンの人々は社交的で誰とでも打ち解けられる。

だから、知らない人でも気兼ねなく話しかけてくる。

始めのうちはドギマギしていたスピネルも、

掃除が終わる頃にはキノピオたちと楽しそうに会話していた。

 

 

スピネルの笑顔を見るとほっとする。

 

 

四日前、彼女はろくに口も利けない状態だった。

でも、今は普通に人と会話し笑っている。

嬉しい。とても嬉しい。

 

あらかた掃除したところで依頼者に報告、速やかに「猫の手」まで帰った。

 

「猫の手」のカウンター奥の階段を三階まで上ると休憩所がある。

部屋に入って右奥にカウンターがあり、同僚が数人料理を注文していた。

僕たちはとりあえず、整然と並べられている円卓の内、窓際の円卓に座った。

 

「スピネル、午前の仕事はどうだったにゃ?」

ルーニャがスピネルに聞いた。

「・・・楽しかった。

やりがいもあった。」

スピネルは生き生きと答えた。

 

ルーニャは一瞬目を光らせた。

 

彼女は果断に富んでいた。

つまり、即決断、即実行。

何をするか分からない。

そういった意味では、ルーニャとスピネルは似ているかもしれない。

彼女の鋭い瞳を見て、ふとそんなことを考えていた。

ルーニャがいきなり机をダンッと叩いた。

僕とスピネルは思わず体を震わせた。

 

周りで食事をしていた仕事仲間も、そろって目をこちらに向けた。

「決めたにゃん!

スピネル、短期でお仕事やってみるにゃ?」

 

僕はルーニャのその言葉をなんとなく予想していた。

しかし、スピネルは相当驚いているようだった。

ぽかんと口を開けている。

そんなスピネルを無視してルーニャが続ける。

 

ルイージとペアで依頼を受けてもらうにゃ。

そうすればスピネルはルイージと一緒にいられて、

かつ、お給料ももらえる。

いい条件だとは思わないかにゃ?」

スピネルは顔を伏せた。

どうやら迷っているらしい。

「押し付けがましいぞ、ルーニャ。

それに入社試験はどうするんだ。

社長の推薦があったとしても免除には限界があるぞ。」

「志願書はパス。

筆記試験もパス。

面接はもうこれで十分。

ただし、戦闘試験を受けてもらうにゃ。」

 

戦闘試験!

 

もう、やりたい放題だ。

「戦闘試験は志望者だけじゃ無いのか?」

戦闘試験は希望制だった。

受けないことによってペナルティを受けることは無く、

あくまで特技として披露してもらう加点種目だった。

 

ルーニャは人指し指を左右にふった。

 

「昨日、カメキが山奥でぶっ倒れているゼニノコーを見つけたにゃ。

そのときの証言でスピネル、

あなたが魔法を使ったってゼニノコーが言ったのにゃ。

それも、FPを使わずに。

まあルイージが『大丈夫』って保障してくれるのであれば、

安全面には目をつぶるにゃ。

でも、もしディメーンのようにその力を利用されたら?

バケバケみたいにコピーされたら?」

 

 

僕の頭の中にいくつかの記憶がフラシュバックした。

 

カゲの女王は自らの復活にピーチ姫の純粋な心を利用した。

 

ダークスターはクッパの遺伝情報を取り込みその力を行使した。

 

兄さんが戦った名も無き魔物は

兄さんの名前、外見、能力、地位名誉全てを奪った。

 

そしてディメーンは

僕を利用して世界を破滅に導いた。

 

今でもディメーンのことを思い出すと、

地の底からわき出でるマグマのごとき憎しみが僕の体を包む。

気がつくとルーニャとスピネルが心配そうに僕を見ていた。

 

心の中の闇が僕の顔に見え隠れしていたらしい。

 

「ごめん、話を続けてくれ。

異論は無いから。」

コホン、とルーニャは仕切りなおすと再び話し始めた。

 

「だから、この会社に入社するにしろしないにしろ、

どの道、魔法は見せてもらうにゃ。」

 

 

ルーニャがこのことを知っているということは、

すでに社内全体にスピネルの話が広まっているという考えが自然だ。

人は未知のものに興味を示すと同時に、恐怖する。

つまり、スピネルは今、

僕の同僚たちの興味の的であり恐怖の的でもある。

 

まあ、ここにいる人たちの場合

興味対恐怖の割合は991位だろうけど。

 

僕はうつむいたままのスピネルを見つめた。

そして、誰にも聞こえないように囁いた。

 

「スピネル、答えなくてもいいよ。

皆、スピネルが動揺していることも知ってる。

今答えを出す必要は全く無い。

ただ、一言、『考えさせて』と言えばいい。

それも嫌なら逃げ出してもいい。

僕がきみをかばうから。

皆、わかってくれるから。」

 

僕はさりげなくスピネルの頭を撫でた。

そこで初めて気がついた。

スピネルが震えているのに。

今すぐにでもスピネルを連れて、

ここを離れなきゃいけないような気がした。

 

 

 

ルイージの小説

To Be Continued